2階のベランダで洗濯物を干していた時のこと。
娘(当時2歳)はベランダにつながる部屋にいて、窓は網戸にしてあった。
たまに後ろを振り返ると、娘が手を振って笑っている。
洗濯物を全部干し終わって、さぁベランダから部屋に戻ろうと窓に手をかけた時である。
え?
窓が開かない。
やられた。
ベランダに閉じ込められた。
このベランダに閉じ込められた危機的状況から、どうやって私が脱出できたのか。
今回の記事は、嘘のようで本当に私が体験したことをまとめたものである。
目次
ベランダを脱出するために試みたこと
作戦1 娘に鍵を開けるように頼んでみる
娘はまだ流暢に喋ることはできないが、私の言うことはなんとなく理解しているはず。
そこでガラス越しに鍵を指さしながら、「ここ開けてー」と話しかけてみた。
この段階ではご近所さんに知られたくなかったので、小声で。
何度か話しかけたが、娘の位置からだと鍵が障子の枠に隠れてしまっているためか、上手く伝わっていないようだった。
不思議そうな顔をしながら、窓ガラスをぺたぺた叩き返してくるだけ。
作戦2 窓枠ごと外せないか試してみる
「ここ開けてー」と話すことと並行して、窓枠ごと外せないかと力技に出ることにした。
網戸は意外にも、すぐに外れた。
だが、窓枠は外れなかった。
窓枠は通常、ロックが掛かった状態になっているので外れない様になっている。
通常ではない場合とは、玄関から入らないような大きな家具(例:ダブルサイズのベッドなど)をベランダ経由で入れたりした後に窓枠を外し、その後ロックを戻し忘れたなどの場合だ。
網戸が外れたのは、以前網戸を張り替えた時にロックを戻し忘れたのだろう。
なればと、もう1回娘へ窓越しに呼びかけてみたが、やはりダメだった。
それどころか、自分(娘)がリンに意地悪されていると思ったらしく、なんでこっちに来ないのかと言わんばかりに泣き出してしまった。
少し焦りながらも、網戸を戻す。
ともかく、エアコンの室外機に腰をおろし次の策を考える。
「パパー!」
その間も娘は泣き叫んでいる。
作戦3 誰かに玄関を開けてもらえないか
その日は予報では雨の心配は無かったのだが、暖かい日だった。
暑くはないが、じっとしていても汗が滲むくらい。
私の体調はともかく、長期戦になると娘の体調が心配である。
玄関の鍵を開けてもらうことができれば、事態は終息する。
鍵さえあれば、恥を忍んで玄関を開けてご近所に助けを求めることができる。
そして家の中に入ってもらい、中から窓の鍵を開けてもらおう。
そう考えながらズボンのポケットをまさぐる。
結論を言うと、鍵はなかった。
ベランダで洗濯物を干すのに、家の鍵はあまり持っていかないよね……。
だが代わりに違うものがポケットに入っていた。
携帯電話である。
残念なことに、ご近所さんの電話番号を保存していなかったので、合鍵をもっている私の母に連絡を取った。
運良く実家にいてくれたので電話はつながり、母が来てくれることになった。
だが、話している間に気づいてしまったのだ。
玄関にチェーンロックをかけっぱなしであることを。
これでは駆けつけてくれても、チェーンロックのせいで中に入れない。
娘は相変わらず大泣きしている。
電話を切った後、娘に呼びかけてみるも窓の鍵に気づいてくれることはなかった。
そうこうしている内に最悪の事態が起きる。
娘が畳に突っ伏して動かなくなったのだ。
しゃがみこんで覗き込んでみると、泣き疲れたのか寝ようとしている。
そしてもう、私の呼びかけに反応してくれなくなってしまったのだ。
作戦4 119番に電話
娘が眠りに入った段階で閉じ込められてから30分以上が経過。
洗濯物を拳に巻いて、窓を割ろうか?
いやいやそんなことをしたら、娘にガラスの破片がかかってしまう。
ベランダから飛び降りて1階の窓を割って入ろうか?
下を覗き込んでみると隙間は狭く、おまけに木も生えている。
下手をすれば飛び降りた時に怪我をして動けなくなる可能性が。
とここで、重要なことを思い出した。
洗濯物を干す前に2階のトイレの窓を開けたんだった。
トイレの窓は普通の窓より小さいが、活路が見えた気がした。
2階から突入できそうな人がいるところで、電話番号を知っているところは1つしかない。
携帯電話の電池残量を確認して、人生で初めてこの3桁の数字を押した。
すぐに消防へつながり、名前と住所そして現在の状況を伝えるとすぐにはしご車を手配してくれた。
10分も経たないうちに、サイレンは聞こえてきた。
そして、その音は確実に我が家へ近づいてくる。
「助かった……」
エアコンの室外機の上にへたり込んで、横目で娘の様子を伺う。
娘は穏やかな顔ですやすやと寝ていた。
ベランダ脱出までの軌跡
はしご車が到着するのとほぼ同時に、私の母も我が家に到着。
更にサイレンを聞いて、ご近所さんも集まってきてしまった。
かなり恥ずかしい……。
到着した消防隊員の方に玄関にはチェーンロックがかかっていることと、2階のトイレの窓が唯一開いている窓であることを伝える。
2階のトイレの位置もベランダからジェスチャーを交えて教えた。
その結果、まずは私の母が持っている玄関の合鍵を使って鍵を開けた後、チェーンロックが外れないか試すことに。
結果は外れなかった。
最悪鍵を壊してよいか聞かれたので、良いですと返答した。
この際、ぜいたく言っていられないからな。
そうこうしている内に、2階のトイレの窓が開いているのが確認できたと消防隊員が伝えてきた。
チェーンを切る方法の前に、開いている窓にはしごをかけ、家の中に突入できるか試してみるとのことだった。
しばらく静かな時間が続いた後、窓の向こうから消防隊員と私の母の顔が見えた。
そして……窓の鍵が開けられる。
時計を見ると、ベランダに閉じ込められてから実に1時間が経過していた。
私はすぐに娘に歩み寄り、抱きかかえる。
そして、消防隊員が娘に脱水症状がないかというチェックと検温をおこなってくれた。
結果は平熱で、脱水症状も起きていないとのこと。
ここで初めて本当に安心した。
その後、娘を私の母に見ていてもらい、救急車を拒否する書面にサインをしたり、突入した窓の傷などの確認をしたり、突入に使用した器具(三段はしご)の説明を受けたりした。
もちろん、ご近所さんにもお騒がせしましたと挨拶も。
引き上げる消防隊員の方々にも重ね重ねお礼を言って、このベランダに閉じ込められた事件は幕を閉じた。
今後の対策
私の場合は、以下の2点により家に大きな傷をつけることなく助かった。
・携帯電話をもっていたこと
だが、そもそも閉じ込められないようにしなければ根本的な解決にはならない。
そこで今後は、窓の鍵を閉められないように対策すること。
写真の娘が右手に持っているような突っ張り棒を窓枠にかませるのである。
標準的な窓1枚の横幅が約100cmなので、70cm~110cmのサイズだとぴったりだ。
そして1本だと不安なので2本使用。
他にもサッシストッパーといった商品があるようだ。
これにより、万が一また閉じ込められた場合に合鍵で入ることができるし、普通の部屋の窓であればトイレの窓より大きいため突入が楽になる。
でも、また閉じ込められるのはもう嫌だな……。
最後に
娘の様子をしっかり見ていたつもりでも、ちょっと目を離した隙にベランダに閉じ込められた。
小さい子どもがいる家庭では、こういうことが常に起こりうるということを今回の件で身をもって体験した。
私の場合は笑い話で済んだが、真夏や真冬など気温が厳しい時期に起きていたら娘がどうなっていたかと思うとぞっとする。
突っ張り棒と、チェーンロックの解除、他の部屋の窓を開けておく。
またベランダに閉じ込められないように、そして娘を危険な目に合わせないように日々気を付けていきたいと思う。
今回はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございました。