父子家庭歴が1年10か月が過ぎた。
リンの心は長い間凍りついていたといってもいい。
あなたは過冷却という現象をご存知だろうか。
ちょうど過冷却のように、徐々に冷やされた後、大きな衝撃により一気に凍ったのである。
過冷却(かれいきゃく、英: supercooling、undercooling)とは、物質の相変化において、変化するべき温度以下でもその状態が変化しないでいる状態を指す。たとえば液体が凝固点(転移点)を過ぎて冷却されても固体化せず、液体の状態を保持する現象。水であれば摂氏零度以下でもなお凍結しない状態を指す。第一種相転移でいう準安定状態にあたる。
過冷却-Wikipedia
小さい頃から、リンの周りには共感というものが皆無だった。
- 家の中で遊ぶ→外で遊んで来い。
- 外で遊ぶ→ほっつき歩いてばかりでどうしようもねぇな。
- テストで良い点とった→次もがんばれ。
- お兄ちゃんなんだから我慢しなさい。
- 外食:何食べたい→意見を言う→結局意見と違うお店に決まる。
- 外出先で困っている人を助けた話をする→世の中には善意につけこむ悪い人がいるから気をつけなさいと言われる。
- 進路:声の学校に行きたい→普通の大学へ行きなさい
何をやっても共感はなく、「自分は間違っている」と言われているように感じていたのだ。
目次
共感することを自ら止めてしまった
しかし、心が凍り付いてしまったことを人や環境のせいにするつもりは、さらさらない。
全て流され、負けてしまった自分のせいである。
単に自ら共感するのを少しずつ止めていった為だろう。
喜怒哀楽を全て心の奥に押し込んで、人生なんてそんなものだという思考停止を繰り返した結果、どこか捻じ曲がってしまったのだ。
いくら共感されなくても、自分から共感することを止めるべきではなかったのだと気づいた頃にはいい年のおっさんになっていた。
娘の熱量
社会人になり、結婚してからもリンの心はまだ凍りついたままだった。
思えば離婚に至ったのも、その凍り付いた心が生み出したものなのかもしれないと今になって感じる。
離婚という衝撃を受けてもなお、しばらくは無感情の呪縛は溶けずにいたままだった。
だがそれを溶かしてくれたのは、娘だ。
父子家庭となり、慣れない子育てで悪戦苦闘。
それでも娘は、ことあるごとに「パパー!パパー!」と無償の笑顔で近寄ってきて、ギューっとしてくれる。
こんな自分でも娘は父親として認めてくれているのだ。
自然と涙がこぼれた。
もう何年、泣いていなかったのだろうか。
大人になってから、悲しみの感情ではなく温かさで涙を流したのは、それが初めてのこと。
娘の熱量はリンの氷を溶かすには充分すぎる熱量だった。
最後に
娘のあたたかい熱量を受けてからというもの、リンは変わった。
少しずつではあるが、周囲に対して感情が出せるようになってきたのだ。
ブログを始めようと思ったのも、転職を決意したのも、子育てについてリン親と衝突するのも根源をたどれば娘が凍りついた心を溶かしてくれたことから始まっている。
もし将来娘にこのブログを見せることになったら、少し恥ずかしいが、ここに記しておくことにしよう。
「あなたはパパの恩人なのだ」と。
今回はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございました。
コメントを残す