ネットゲーム、コンシューマゲーム(家庭用ゲーム機)、アーケードゲーム何でもあり。
ゲーム好きが高じて遊技場施設運営(ゲームセンター)へ興味本位で飛び込んだのは14年前の話になる。
ゲームセンターは風俗営業法管轄では唯一、18歳未満が入店できる施設。
風俗営業法が適用されていなかった時代もあったが、不良のたまり場だった大昔の状況を鑑み、風俗営業法8号営業となった。
警察の指導の下、現在のような子どもでも安心して遊べる施設となったのである。
そんなゲームセンターの店長の業務と年収を店長経験者であるリンが語る。
目次
ゲームセンターの店長業務
運営管理業務
人件費、(景品の)仕入代、電気代、賃借料など。
損益計算書や損益分岐点のデータから、店の方針を決める。
メダルゲームコーナーで言えば、期間ごとのメダルIN/OUT枚数の管理分析もここに入る。
各カテゴリーの内容については下記関連記事にも書いているので、興味ある方はあわせてお読みいただきたい。
中小の店舗の中には店長でも家賃を知らなかったりすることもあるし、店長と言っても責任を取らせるだけの立場、いわゆる「名ばかり店長」もいるから様々。
ウチの店はメダルゲームコーナーが強いとか、音楽ゲーム(以下音ゲー)コーナーが充実しているから次はこのマシンを入れたいなど。
権限の度合いや上司の好みなどにより、希望が通るかどうかは異なる。
私の希望は上司の好みとは全く合わなかった。
私が店長を任されていたゲームセンターはメダルゲームコーナーが強かった。
具体的な数値で言うと、月間のメダルIN枚数は2億枚以上、年間で24億枚前後である。
だから中型~大型のマスメダル機を希望していたが、上司は7号転用機(パチンコ、パチスロ)信者でしばしば7号転用機を入れる羽目になったのだ。
7号転用機は短期的な利益が見込め回収も速いが、マシン寿命も短い。
店舗の狭いバックヤードを圧迫するし、廃棄時のトラック代を節約するために要らないマシンを肥やしにしておかなければならないのである。
近年の7号営業(パチンコ、パチスロ店)の苦境を見ると、今のメダルゲームコーナーはどういうオペレーションになっているのだろうか。
ゲームセンター施設運営全体の市場規模が4000億円ちょい。
小売業で言えば、電気店でおなじみのノジマやスギ薬局の母体スギホールディングス、教育関連で言えばベネッセホールディングスの売上高と同程度。
これでゲームセンター発のムーブメントを起こすのは難しいのかもしれないが、他業種追随だけでは更に厳しい状況となっていくだろう。
ルーチン業務
前日の状況確認(売上など)、報告
出勤後、マシンの電源をすべて上げた後、前日遅番社員がサーバーにあげた売り上げを確認する。
マシンカテゴリー別、マシン個別でも確認できるので、前日に入れ替えた景品の売り上げやイベントをおこなったカテゴリーの売り上げを要チェック。
そうこうしている間にパートが出勤し終わるので、前日の遅番からの連絡事項やイベント開催中に初めてシフトに入ったパートへイベント内容の説明など朝礼をおこなう。
売上が良くても悪くても、何故こういう結果になったかを考える。
特に売り上げが良いときはサーバーを見た上司からインターネット電話がかかってくるので何故よかったかを答えなくてはならないからだ。
売上入金と両替のため、銀行へ
セキュリティのため時間はまちまちだが、売上金は銀行へ入金に行く。
同時に両替機やメダル貸出機に入れておく千円札や百円玉の両替もおこなう。
正直大金を持ち歩くのはかなり怖いが、両替をしておかないと土日祝日や大型連休中に両替のための紙幣や硬貨がなくなってしまう。
無料で両替できる枚数が決まっているので、店と自分のキャッシュカードを使ってATMで数回両替をおこなう。
同業者に偵察に行ったついでに業務両替をするのは絶対にダメ!
労務管理業務
店舗には正社員だけでなくもちろんパートもいる。
パートの労務管理も店長の業務である。
・店舗スタッフの募集広告、採用面接
・シフト組み
・パートの給与計算
上記の基本的な業務に加え、お客さんからクレームが来た時などは対象の従業員に対して個別に面談をおこなったりする。
クレームとしては、常連のお客さんとばかり話している、接客態度が悪かったりお客さんに暴言を吐く、服装がだらしないなどが多い。
中でも常連のお客さんとの付き合いについては難しいところもある。
常連のお客さんも一見のお客さんに対しても分け隔てない態度で接することについて、常連のお客さんから「つまらない」というクレームをいただいたこともある。
だが公平に接することについて、私は曲げなかった。
全ての面で優遇するということではなくて、要所でプラスアルファがあればいいのだ。
例えば、お金を多く使ってくれるお客さんが確率的に有利なイベントを開催するということがそれである。
但しそれもバランスで、そういうイベントを乱立させバランスが崩れると、多くのお客さんから、この店は常連と店が馴れあっていると映ってしまうからだ。
フロア業務
大きいところだと店長はフロアに出ないこともあるようだが、個人経営のゲームセンターでは店長もフロア業務に出る。
人件費削減の意味合いが大きいが、現場へ出ることで分かることがある。
それはお客さんの流れである。
あるお客さんはパチスロ機でメダルを増やした後、大型マスメダル機へ移動してまったりと遊ぶ、またあるお客さんはメダルゲームコーナーとクレーンゲームコーナーを行ったりきたりしているなという風に。
マシンメンテナンス
パート、アルバイトだとお客さんに対して「できません。なおせません。わかりません」でも許してもらえるが、店長ともなるとさすがに「できません」では許されない。
新規のマシンだろうが、古いマシンだろうが、いじったことのないマシンだろうがお客さんには関係ない。
だから常日頃から事務所に保管してあるマシンの説明書には目を通すし、良く壊れる消耗品の在庫チェックなどはかかさない。
音ゲーをはじめ、各種ビデオゲームのボタンやマイクロスイッチは日々チェックが重要だ。
マシンメンテナンスの必需品はピカール(研磨剤)だった。
これで金属面を磨くと光沢が全然違うよ!
ちょっとした錆ならきれいに落ちる。
日常生活でもドアノブや金属食器、自転車の金属面を磨くときなどに重宝するのでおススメ。
他に面白いエピソードとしては、メンテナンス中のマシン内で感電したり、廃棄するプリントシール機からパソコンを引きずり出して、OSを載せ替え、事務所用のパソコンにしたことがある。
イベント企画運営
店長だけに限らないが、社員は大会やサービスを企画、立案する。
賞品に使う予算、内容などは店長が最終判断。
店頭掲示のポップを作ったり、イベント用の三角くじをしこしこ作成したり。
パートにカウンターでくじを作らせたりもするけど、不正防止のため当たりくじは正社員クラスだけで作る。
信頼云々ではなく、お客様以外の人間がうろついている可能性のあるフロアに当たりのスタンプを持っていかせるのはリスクだから。
景品業者との商談
これは店長だけでなく、景品担当リーダーの業務でもある。
店長になる前から景品担当リーダーをやっていたので、景品業者との商談をおこなっていた。
店舗によっては本部から景品が送られてくるところもあると聞くが、ロードサイドの専門店においては個別で商談をした方がよりお客さんのニーズに答えることができる……
はずなのだが、クレーンゲーム機が多いとマシンの空きを埋めるために仕方なくとるものもあり店による差別化があまりないというのがリアルなところだと思う。
1社につき100~300種類くらいの景品を見て、これだというものは2割足らずである。
その他
同地域競合店の偵察
基本的にゲームセンターは同業者の立入はお断りなので、スーツではなく普段着で偵察へいく。
私はフロア業務にも出ていた(スーツ)から、なるべく店にいる時と違う格好でおこなっていた。
・マシン構成(各カテゴリー比率)
・客層(年齢、男女比)
・各コーナー1時間あたりの客数(延べ人数)
・イベント内容(メダル貸出レート、賞品の内容)
・クレーンゲーム内の景品と1プレイあたりの料金、アームの強さチェック
・従業員の勤務態度、フロア人数・アルバイトの時給単価
気をつけるべきは、ロードサイドの専門店と複合施設内や駅近のゲームセンターでは、運営方法が異なること。
複合施設や駅近の店舗は一見さんが多いため、回転率を高めるためにメダル貸出レート、クレーンゲーム機のアーム設定、ビデオゲームの難易度などを専門店のゲームセンターより厳しめにする傾向がある。
ちなみに偵察にかかる交通費、お金は自腹であった。
警察へ届出
風営店舗管理者としてレイアウト変更や機械の台数変更があった場合、管轄の警察署の生活安全課へ赴き、届出をおこなったりする。
レイアウト変更は、機械の向きを変えたなどの小さな変更も含まれる。
申請に行ったついでに、青少年への対処などを話したりする。
面倒だけど、きっちりやらないとね。
消防署へ届出
防火管理者(甲種)を兼任していたので、消防署の立入検査への対応や改善事項の報告書提出などをおこなう為に消防署へいくことがある。
店舗のバックヤードには景品のダンボールが積み上げられていることが多いこともあって、通路に置かれているものについて指摘されるんだよね。
日ごろから、事務所やフロアの整理整頓指導は欠かせない。
ゲームセンター店長の年収・待遇
これもメーカー直営店やフランチャイズ、個人経営など会社の規模によって違うが、私のの勤めていたゲームセンターは中小規模であったので最終的な年収は店長で300万円程度(賞与込、最終年の源泉徴収票の月割り金額から換算)。
社宅の家賃補助(5万円)があったので、実質は360万円以上400万円未満というところか。
ちなみに休日は月8日で、年間で言うと8×12=96日である。もちろん年末年始、GW、お盆などは休めない。
労働時間は基本7.5時間(9:00~17:30)だが、新マシンの導入などがあれば、一度家に帰った後夜中に再出勤して調整などをおこなうこともある。帰れずに夜まで残った場合で最長27時間勤務。
年末年始などの繁忙期で最長14日連続勤務だった(労働基準法違反)。
一応言っておくと、所定労働時間7.5時間で年間休日96日の方は適法である。
必要スキルは特にないが、ポップを作ったりするためパソコンの知識はあった方がいいし、マシンメンテナンスをする関係上、機械に強い方が向いているだろう。
大規模店舗の店長はもっと待遇が良い(500~600万円)という噂だったが、私は大規模店では働いたことがないので真相は謎だ。
ゲームセンター店長あるある
「夜道に気をつけろよ」と言われる。
「夜道に気をつけろよ」
これトラブルがあった時、こわもてのお兄さんに言われることがある。
夜道だったり、帰り道だったり幾つかのバリエーションはあり。
「若い衆つれてくるからな」ってのもあったりする。
大体はその場の勢いででてきた言葉なのだろうが、悪質と思われる場合は警察に通報。
ちなみに本当に夜道で怖い目にあったことはない。
閉店作業後の帰宅時に明らかに店の従業員じゃない車が同時に発進してついてきたことはあったけど。
マンション経営の電話がやたらかかってくる。
これは店舗の場所にもよるかもしれないが、地味にうっとうしい。
あまりにもかかってくるので「絶対儲かりますから!」という根拠のないセールストークに「じゃあ、あなたがマンション経営やって、儲かった分の一部を私にください!」とふざけて返したこともある。
最終的には電話を取ってマンション経営だったら電話を切らず、そっと受話器を机において業務を続けるという方法を取っていた。
非通知の無言電話がかかってくる。
大体誰がかけてきてるかはわかっているんだ。
犯人と思われる人物が店をでてから1時間後ぐらいで、いつも同じような時間帯だったから(笑
ただ証拠もないので、面と向かって「無言電話やめてくださいね」とも言えない。
だからマンション経営と同じでそっと受話器を放置する。
非通知拒否設定はメーカーさんのサービスセンターからの連絡が非通知なので、できないのである。
まとめ
私が店長をやっていたのは10年近く前の話なので、現在は変わっているかもしれない。
アミューズメント施設運営の売上額が2007年に比べて半分近くまで減っていることを考えれば、今残っているのは体力のある運営会社だけだと思う。
だとしても、1日の売り上げはジリジリと下がっているだろうと予想するので、年収額は500万円いけば相当優遇されていると言っても良いのではないだろうか。
ゲームセンターの店長という仕事は、正直なところ手を抜こうと思えばいくらでも手を抜ける。
例えばまったくフロアに出ず、何かあるまで事務所で寝ていたって店を回すことは可能だ。
だが、ある程度権限を任された状況で、自分で考え店舗を運営するということはとてもやりがいがあるし、自分を成長させてくれるだろう。
データを分析し、仮説を立て実行していく点では一般の企業の業務と何ら変わらない。
私もゲームセンターの店長をやっていなければここまでパソコンに強くなれなかったし、接客業の大変さを知ることもなかっただろう。
簡単ではあったが、ゲームセンターの店長が普段どんな仕事をしているかわかっていただけただろうか。
今回はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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