久しぶりの「アドヴェント・カレンダー」を読んで。

アドヴェントカレンダーアイキャッチ
リンがアドヴェント・カレンダー(北欧諸国ではユール・カレンダー)と言うものを知ったのは、1996年だから16歳のとき。

ヨースタイン・ゴルデル氏(以下ゴルデル氏)の「アドヴェント・カレンダー(原題:Julemysteriet)」を読んでからである。

ゴルデル氏は「ソフィーの世界」で一躍有名になったノルウェーの作家。

15歳の時「ソフィーの世界」が日本で出版されるというのをラジオで知り、当時哲学に興味があったリンは初めてゴルデル氏の文章を読んだ。

分厚い本だったが、訳者の池田香代子氏の訳も読みやすく、中学生でもさらさらと読めたのを覚えている。

そんな折、16歳の時に出版されたのが「アドヴェント・カレンダー」である。

若い頃に何度か読み返しているが、30歳を過ぎてからは一度も見ていなかった。

実家に帰ったとき、本棚に置き去りにされていたこの本が気になったので、久しぶりに手に取ってみたのだ。

目次

アドヴェント・カレンダーって?

アドヴェント(待降節)の期間、子どもたちのモチベーションを高めてくれるのがアドヴェント・カレンダー。

実際にはクリスマス前の4回の日曜日を含む期間の事を指すので、必ずしも毎年12月1日が始まりではないが、アドヴェントカレンダーは12月1日から始まるものが一般的である。

12月1日~12月24日まで、毎日窓を一つずつめくっていき、すべてめくり終わるとクリスマスを迎えるといったもの。

めくられた箇所からはおもちゃやお菓子が出てくるものが多いが、この本に出てくるアドヴェントカレンダーは、昔ながらの絵が出てくるシンプルなタイプ。

だが面白いのは、めくられた窓から毎回小さな文字でびっしり書かれた紙片がでてくること。

この紙片に書かれた物語とそれを読む主人公のヨアキムを中心に話が展開していく。

よく練られた展開

教会イメージ
ソフィーの世界もそうだが、物語の終盤に向けて次々と謎が解き明かされていくので、読者は最後まで飽きることなく楽しめる。

キリスト教の歴史を時間と空間をさかのぼってベツレヘムへ向かうストーリーはとても面白い。

12月1日の章から一気に読み通してもいいし、12月1日~12月24日の各章を1日ずつ読んでもいいと思う。

登場人物が多く日本人にはなじみのない名前などが多いので、カタカナに弱い方は最初は読みづらいかもしれない。

だが東方の三賢者(カスパル・バルタザル・メルキオール)や天使(エフィリエル・ウムリエル・セラフィエル・ケルビエル・エヴァンゲリエル)の名前がわかると面白いし、キリスト教の歴史がわかるとクリスマスがより身近に感じてくるのではないだろうか。

サンタクロースのモデル

作中に出てくる司教の聖ニコラウス(セント・ニコラウスからサンタクロースへ変化)はサンタクロースのモデルとなった実在の人物である。

「どんどん人にあげればあげるほど、わたしたちは豊かになる。自分ひとりで抱えこめば抱えこむほど、わたしたちは貧しくなる。これが惜しみなく与えることの神秘だよ。それだけのことだ。でもこれは貧しさの神秘でもあるな」

ヨースタイン・ゴルデル「アドヴェント・カレンダー」12月19日の章 (232P) 司教ニコラウスの言葉

学生のときは、この一節が気になるということはなかった様に思う。

社会人となり、今40歳近い年齢になってこの言葉に妙に共感した。

作中で主人公がアドヴェント・カレンダーの既に開けた窓を閉めてみると、今まで気づかなかった絵が出てきてびっくりする描写があるが、まさにこれと似たような感覚である。

最後に

16歳当時は英語の勉強がてら、こういった西洋思想の根本にある本を本屋で探したりしていた。

そのほうが勉強している感が薄れるし、日本人と異なる習慣を理解することで教科書の内容がすんなり理解できるようになったからだ。

クリスマス1つ取ったって、日本人の考えるクリスマスと欧米人の考えるクリスマスは違うものだろう。

アドヴェント・カレンダーもそう考えて購入した本の中の一つだが、20年以上経った今では、当時特に意識もしなかった作中の聖ニコラウスの言葉が、自分の中に浸透してくる。

3歳の娘にはまだまだ早いが、将来「アドヴェント・カレンダー」を一度は読んでほしいと思う。そんな本である。

今回はここまで。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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